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【叫び】ムンク展と過去のムンク展【実は叫んでない】

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再度ムンク展に行ってみました。何度も足を運びたくなりますね!

会場内のテキストは混んでいると読み飛ばしてしまう口ですが、今回夢中で読んでしまいました。時系列・エリアの作品点数・作品の並びと完璧にマッチ!まさに学芸員さんの職人技です。

 

会場内テキストは学芸員さんの個性が特に現れるポイントです。美術館に行ったら文章見比べると面白いです。

北欧生まれのおしゃムンク

「叫び」が代表的なムンク。おどろおどろしい印象ですっかり定着している事にもったいなさを感じます。

ムンクは北欧生まれ。北欧といえばフライングタイガーやイケアなどのおしゃれな北欧雑貨がすぐに思い浮かびますね。他にもムーミン・マリメッコなどなど。

北欧の雄大な自然とライフスタイルがその類まれな美的感覚を生み出すのか、ムンクの作品もまたコテコテの北欧カラーにあふれています。補色の使い方や軽妙なタッチ、画面構成は今みても全然古臭さを感じません。

 

ドロドロの怖い作品ばかりではなく、晩年にかけてはけっこう爽やかな色合いが多いです(どこか不安げではありますけど)。

ムンクを見て思い出したあの風景

日本人の私たちから見ればムンクの色使いは馴染みがないかもしれません。

 

ですが2014年オスロからベルゲンまでのフィヨルドを旅行した時、ムンクのカラーがそこにありました。

 

オスロに到着したのは午後、季節は夏でした。歩いている間にすぐ夕方になりました。街は見たことがないくらい青みがかった燃えるようなピンク色に染まって、建物の影は紫色に。写真に撮ればどこも青色のフィルター加工されたみたいに映りました。

 

もうそれは本当に不思議で、情緒の乏しい未熟な20代で北欧に行ったことを後悔するくらい神秘的でした。

 

神性を帯びた大気、迫り来る自然。言葉に表すと途端につまらなくなってしまうこの語彙力のなさにがっくりきます。

 

フィヨルドは美しすぎて、「恐ろしい」。

 

死んだんじゃないかと錯覚するほどの圧倒的な天国感に押しつぶされそうになる小娘の私。こんなところに人間が居ていいものなのか甚だ疑問に思う。

 

これこそがムンクが囚われた狂気なんでしょうか…?美術館でみたムンクは、そんな鮮烈なフィヨルドの神々しさを思い出させてくれました。

アーティストの暮らしは今も昔も変わらない

ムンクは油絵の他に版画も多く残していました。また、ライフワークとしての芸術活動と並行して、生活を維持するために商業的な絵画も描いています。

 

多くの人に手に取ってもらう為版画をたくさん刷って低価格で販売したり、作業効率を上げるために色版を作らず手彩色でしあげたり、ウケのよかった絵は複製して色違いのバリエーションで販売したりとかなりフットワークが軽い印象です。

 

自分の信じる芸術を突き詰めるには、アトリエと画材とお金が必要です。信じる芸術が大衆に受け入れられるのには更に時間と根気も必要ですが、それらを注いでも生きているうちに叶うかどうかわからない孤独な戦いです。

 

固定概念や変なプライドに囚われず柔軟に絵に携わり続け、病みながらも逞しく80歳まで生に食らいついたムンク。その生き様に父のような背中を感じるのです。

ムンクが叫んでるわけじゃない?

有名な「叫び」(scream)はまるで"中央のムンクが叫んでいる"と認識されがちです。

 

実は中央の人物はムンクと明言されていません。ムンクの残した文章にはこう書かれています。

夕暮れに道を歩いていた 一方には町とフィヨルドが横たわっている 私は疲れていて気分が悪かった 立ちすくみフィヨルドを眺める 太陽が沈んでいく 雲が赤くなった 血のように 私は自然をつらぬく叫びのようなものを感じた 叫びを聞いたと思った 私はこの絵を描いた 雲を本当の血のように描いた 色彩が叫んでいた この絵が〈生命のフリーズ〉の《叫び》となった

 

ここで書かれる「生命のフリーズ」はムンクが1890年代に主に製作した作品のシリーズです。シリーズのうちのひとつが「叫び」と言うこと。そして叫んでいるのは、暮れなずむフィヨルドの色彩そのもの…。

 

中央の"誰か"は、偉大な自然の叫び声に晒されて思わず耳を塞いでいる…。

 

みるからに中央の人は気持ち良さそうではないです。不安・恐怖・孤立・悲しみ。そんな言葉がぱっと思い浮かびます。これだけ愛される名作になったのは、苦悶の表情で身をよじる姿に悩める人々が共鳴するからでしょうか。

私の母とムンク

上の額に入った絵は私の自室に昔から飾ってありました。ムンクの絵は子供の時から気に入っていて、この額縁の絵もなんとなく大事にとっておいたものです。元は母のものです(額本体は50年前の)。

 

たまたま母とムンクの話になりふと思い出して自室からだしてくると「ムンクのカードの下に石原裕次郎の写真が入ってたかも」と母が言い出し、中をあけてみると出てきたのは裕次郎ではなく、赤ちゃん時代の母の写真と1981年のムンク展のチラシでした。ポストカードじゃなくて、チラシを折りたたんでたんですね。

 

私が生まれるだいぶ前に来日したムンク展です。 

 

これは都美館ではなく東京国立近代美術館での展示のもので、代表的な「叫び」も来ていたようですがメインは「桟橋の少女たち」です。

叫び×4!

現在やっているムンク展に来ている「叫び」は、都美館HPによると「複数描かれた《叫び》のうち、ムンク美術館が所蔵するテンペラ・油彩画の《叫び》は今回が待望の初来日となります。」とあるので、1981年のものとは別作品でした。

 

1981年のチラシを見るとオスロ国立美術館とありますね。画像はクリックすると拡大するので見てみてください。

 

ちなみに「叫び」は版画を除いて世界に4つ。オスロにそのうち2つあって、一つがムンク美術館。もう一つがオスロ国立美術館の所蔵です。

また、ムンクの絵はしょっちゅう盗難に遭っているそうですよ。

 

次にムンク展が来日するのはいつになるでしょうか。

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